シロクマのしあわせ練習帖

朝空写真と脳内排出、ときどき夜空

環境が変わったということは、自分のエネルギーバランスが変わったということ

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騒音との闘いが始まり丸2週間たった。子どもが発するの騒音と大人が発するの騒音の区別がつくようになり、音の根源はだいたい想像できるようになった。

5年以上も前になるが、初めてこの部屋に引っ越してきたときに、集合住宅特有の壁や天井を伝って聞こえる生活音に驚いたものだった。それはそれで、閑静な住宅の中に遠くかすかに聞こえる他者の存在を知る唯一の音に過ぎなかったわけなのだが。

2週間前に突如現れた上階の住民が出す音は、他者の存在というよりは騒音に過ぎず、やる気や集中力など、全エネルギーを持っていかれるような音だった。

数年前隣の住民が変わった時も、大きすぎる男性の声と、夜中23時過ぎに女性が料理する音(特に水切り籠を回す音)に困惑した。ただ、二人に子供が生まれたことにより、生活リズムは変わり、生活音もごく一般的なものになり、窓をあけると聞こえてくる家族の会話は癒しに変わった。

普通に生活をしていれば、周りの人間を困惑させるような音は出ないということを隣人は教えてくれた。

ということは、上階の家族は普通の生活ではないということになる。

朝6時過ぎから子供が起きだし遊ぶ音、大人も起きだして掃除をする音。そして時々わけがわからない床からの振動音。

こころの準備ができていないところへの不意打ち、そして音の発生源を想像できないという不安と、いつ終わるのかが予測できないという困惑が入り混じって私の中の全エネルギーが低下していく。

昼食の準備をしながら息子と会話をしていると、廊下から子どもの鳴き声が聞こえてきた。

以前隣人が子どもの鳴き声が迷惑だろうと、菓子折りをもって謝罪にきたことがあったが、正直子どもの鳴き声に苦しんだことはない。ましてや上から伝わってくる騒音に比べたらカワイイものである。

子ども部屋が隣同士の息子に、子どもの鳴き声にモヤモヤしたことがあるかと聞いてみた。すると、彼はこう答えた。

子どもの鳴き声は、理由があるし泣いている理由が想像できるから嫌だと思ったことはない。ただ、朝イチに天井ドンで目覚めたときは不快極まりないよね。しかも天井から聞こえる騒音って、音の理由を想像してもネガティブなことしかないじゃない。ガサツとか、乱暴とか、粗雑とか、行動が不細工というか。残念なことしか想像できないよね。

 

あぁ、なるほどと納得した。言葉を操る仕事に就いているだけあって、自分の感じたことをちゃんと言葉で表現できる息子を尊敬した。わたしは、自分の思いを言葉にすることが苦手な上に、感情を上手に表現することさえできないでいる。

私が抱くこの感情は怒りではなく、不安と悲しみと残念な気持ちといろいろなモヤモヤが渦巻くことでかき乱されているだけで、本当は、丁寧にモノや部屋を扱わないことへの悲しみや痛みも入り混じっているのだということを教えられた。

つまり、上階の荒れたエネルギーに耐えられなくなって、心身共に悲鳴を上げているだけなのだ。

わたしは空が好きだった。ちょっとモヤっとしたり、元気が出ないときは、上に両手を広げてエネルギーチャージするように充電したものだった。それが、今では魔女や悪魔が鍋に煮込んだグルグルの謎の液体のようなものが、天井の上の空間にあるような感覚になり、上を見ることも、空を見ることもできなくなっているのだ。

***

この部屋の空気や居心地が変わったと思うようになったのは、去年の夏ごろからだった。もともと匂いに敏感だったのだけれども、コロナに感染したことでさらに過敏になったと思われ、街やこのマンションの臭いが心地よくなくなったのである。

引っ越したいなと、心のどこかで思い始めていたのだろう。

上階の家族はその思いを露呈させただけである。そして、もうひとつ気づかせてくれた。天上ばかり気にしないで、床にも気にかけろと。

自分たちが出す生活音は、下の階の住民にとって不快感を与えてはいないか気に掛けなければならないことはもちろんのこと、空だけでなく、大地も同じように大事なんだよということを思い出させてくれた。

空の写真ばかり撮ってる場合じゃない、芝生に寝転びたい。そう思った日曜日の朝だった。

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